日常

書店徘徊録

夕方になって気分が楽になったので、日が落ちてから車で数分のミドルサイズのデパートへ出かけた。

屋上の駐車場に車を停めると、無機質な鉄骨とオレンジ色の照明が、夜の空気の中で柔らかな光を放っていた。

デパートの中は人のざわめきと足音で賑わっていた。皆が何かを買おうと商品を物色している。自分は定番の衣料品チェーン店で期間限定価格の安い服を購入し、その後、1階にある大きめの書店へ。


書店の入り口をくぐると、紙とインクの独特な香りが鼻をくすぐる。

自分は書店というだけでテンションが上がるし、この匂いを嗅ぐと「あへぇ」となる特殊性癖(?)の持ち主だ。 今回も熱を帯びた眼で、本を舐めるように眺める。 楽しい。

欲しい本がたくさんあるが、家には買ったまま読めていない積読本もたくさんある。 最近は開高健さんや中上健次さんの小説をしっかり読んでみたいという衝動に駆られている。

少し前、ネットで話題になっていた講談社文芸文庫版、中上健次『異族』を発見。分厚い。 これは本ではなく記念碑だ。碑だ!

ああ、いいな。 辞書並みに分厚い文庫本って、非常にそそられる。分厚い文庫や全集には、その作者の創作や知識がぎゅっと凝縮され、文庫という小さな世界に収められている感じがして、それがまた良い。

その勢いで京極夏彦さんの『文庫版 鵼の碑』を確認。 なんと、これも碑ではないか!

分厚すぎて、一瞬「これは本なのか?」と迷うレベル。これは文庫サイズの匣(はこ)なのでは…?

ちなみに、以前ネットで購入した『カフカ ポケットマスターピース 01』(集英社文庫ヘリテージシリーズ)も分厚くておすすめ。

カフカの作品は、妙にリアルでシュールな悪夢を見ているような感覚があって好きだ。

結局今回は、家の積読本のプレッシャーに負けて何も買わなかった。 でも、楽しかった。

いつか日本探偵小説全集を集めて、背表紙の絵を完成させたい。

本屋に行くだけで、満足感と何かしらのエネルギーを得られるから不思議だ。

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