デイヴィッド・リンチ監督の映画です。
夢を見ているような世界で、リンチ監督のセンスが爆発してます。
この映画は難しいとの意見もありますが、ざっくりとこういう話なんじゃないかな?というのを紹介したいと思います。
様々な解釈ができるので、今回の解説が、この映画を読み解くヒントになればと思います。
目次
マルホランドドライブ、スタッフキャスト、あらすじ
監督 デヴィッド・リンチ
脚本 デヴィッド・リンチ
製作 ニール・エデルスタイン(英語版)
ジョイス・エライアソン
トニー・クランツ
マイケル・ポレール
アラン・サルド
メアリー・スウィーニー(英語版)
キャスト
ナオミ・ワッツ:ベティ・エルムス/ダイアン・セルウィン
ローラ・ハリング:リタ/カミーラ・ローズ
アン・ミラー:ココ(ミセス・ルノワ)/ココ(アダムの母親)
ジャスティン・セロー:アダム・ケシャー
ダン・ヘダヤ:ヴィンチェンゾ・カスティリアーニ
ロバート・フォスター:ハリー・マックナイト刑事
レベッカ・デル・リオ:レベッカ・デル・リオ
ミシェル・ヒックス:ニッキー
メリッサ・クライダー:ウィンキーズのウェイトレス
リー・グラント:ルイーズ・ボナー
メリッサ・ジョージ:カミーラ・ローズ
チャド・エヴェレット:ウディ・カッツ
パトリック・フィッシュラー:ダン
あらすじ
ハリウッドを走る道路、マルホランドドライブで事故があった。黒髪の美女が助かったが、彼女は事故のせいか自分が何者かわからない。彼女はフラフラと街をさまよい、長期で留守にするらしい女優ルースの部屋に忍び込む。
ルースの姪ベティは、ハリウッドで女優のオーディションを受けるためルースの部屋に訪れ、そこでシャワーを浴びている記憶喪失の美女に出会う。
美女はポスターにあった女優の名前から、自分のことをリタと名乗る。リタのことが気になるベティは、彼女が何者なのか二人で調べることにする。
それは、夢を見ているような、不条理な世界の始まりだった。
マルホランドドライブ 感想(ネタバレあり)
この作品、不条理なシーンが続きますが、一個一個のエピソードが面白く、なんだかんだで最後まで見てしまいます。
あくまで自分の感想ですが、ざっくりとこの映画はどういう話なのか?というと、
『彼女(リタ/カミーラ)を映画監督に奪われた売れない女優(ベティ/ダイアン)が、殺し屋に彼女を殺すよう依頼する。殺しは成功し、その証として青いカギ(青い箱)をもらったが、その罪悪感に耐えきれず自分も拳銃で自殺する。そんな自殺した女優が観ている、都合よく書き換えられた夢?妄想?』
ではないかと思います。すべての謎が解決するとは言えませんが、これを踏まえて観ると自分はしっくりきます。
この映画の後半に出てくる青い箱、この箱を覗く前と後で世界が変わります。
箱を覗くまでは、自殺したダイアンが観ている、都合よく書き換えられた夢、妄想です。箱を覗いた後は、時間軸がどんどん飛びますが、ダイアンが自殺をするまでの現実の話です。
妄想パート→現実パートの順で話が進むので初見だとナニコレ?ってなります。前半の妄想パートと後半の現実を比較して見ると、彼女がどういう気持ちだったかより理解できます。
こんな話、よう映画にしたなと思いますが、これがリンチ監督の映像センスで作られると、本当に面白いです。
現実と妄想の対比
前半と後半の対比が面白いです。前半の妄想パートでは、自殺した彼女の願望が強く込められています。
●現実で彼女を奪った映画監督は、前半では映画は中止、カードは停止、預金は無しなど、かなりひどい目に遭います。
●ダイアン(ベティ)は殺し屋にカミーラ(リタ)を殺すことを依頼しましたが、本当は彼女に死んでもらいたくなかったので、前半パートで出てくる殺し屋はドジで失敗ばかりします。
●殺し屋にカミーラ(リタ)殺害の依頼をしたダイナーでたまたま目が合った客の男性は、殺しの依頼をした事がバレたんじゃないか?という強い気持ちから、前半ではダイナーの裏でおぞましいものを目撃します。
●大好きだったが、別れてしまったカミーラ(リタ)は、前半では殺されることを免れ、さらに記憶喪失、まっさらな気持ちでベティ(ダイアン)と新しく恋を始めます。
といった感じで、自殺したダイアン(ベティ)がどんな気持ちだったのか、前半の都合の良い妄想パートを観るとよくわかると思います。
カウボーイ
といっても、この作品には謎がまだだたくさんあります。妄想パートでも現実パートでも登場するカウボーイの男もそうです。
彼はアパートで死んでいる彼女を起こそうとするところから、死者と生者の世界を行き来できる存在(神?)ではないかと思います。
ダイナーのシーン
自分が好きなシーンは、ダイナーで二人の男が話すシーンです。
一人の男が、このダイナーにいる夢を見た。と話します。このダイナーの裏手で見たくもない顔の男がいる、それで恐怖している、そういう夢だったと。
このシーン、ホラー映画も顔負けの緊張感です。カメラは安定せず、常になんだかふわふわしています。
夢で裏に男がいるという話をしたとき、ちょっと視界がふわっと上がって、カメラが窓越しに外を見ようとします。自分はここで、すごいこの映画!って思いました。不条理な映画なのですが、その不条理さや夢っぽい感じを演出するために、緻密に計算されていると感じました。
このあと、もうひとりの男が、じゃあ店の裏手を見に行こう、と誘います、緊張した男が店の裏手へゆっくり歩くのですが、観ているこっちも超緊張します。
まとめ
マルホランドドライブは、自分の解釈では、自殺した売れない女優が観た妄想、夢をリンチ節炸裂で映像にした作品だと思います。
一回見ただけではわからない。見るたびに発見があり、不条理で理解できない状況が、そのままこの作品の味になっていると思います。
今回自分の解釈を紹介しましたが、それですべての謎が解決したわけではないので、ぜひリンチワールドに足を踏み入れ、この世界を味わってもらいたいです。
リンチワールドにはまると、抜け出せなくなります。
近年続編が作られた、スピリチュアルに傾倒したFBI捜査官クーパーが活躍するツインピークスもおすすめです。
あと不条理な悪夢に全振りしたイレイザーヘッドもいいですよ。他人の悪夢を垣間見たような、観たらあかんもの見た!な気持ちになります。